不動産不況に苦しむ中国経済にもう一つのリスクが浮上しています。融資平台、インフラ開発の資金集めをする投資会社などを通じて地方政府が2000兆円ともいわれる巨額の債務を抱えています。その実態を取材しました。
■“2000兆円”巨額債務の実態
朝の中国。男性が一人太極拳を楽しむこの場所は、320億円をかけて整備されたスポーツセンターです。ほとんど使われていないといいます。
近くの店の人
「基本的に誰もいない」
「(Q.商売は?)ギリギリ生きています」
嘆きの声が聞こえてきたのは、中国・貴州省の遵義市。
人口660万人の大都市は、深刻な不景気に陥っていました。
午後8時半ですが、確かに明るいですが人はあまり歩いていません。そして、オフィスビルが7割引きで今売り出されています。
30年ほど前の貴州省の映像です。のどかな景色が広がっていましたが…。
“脱貧困”を掲げる中国政府の掛け声のもと、開発は進められてきました。その結果、この20年でGDPが年平均で10%を超える成長を遂げてきたのです。
総額300億円以上かけた巨大建築「遵義古城」。ところが…。
扉には鍵が掛かっています。そして、中はがらんどうで、もぬけの殻になっています。
出張で来た男性
「(Q.第一印象は?)一応見に来たけど…。もう二度と来ないよ」
急成長を遂げた町に、何が起きているのでしょうか。
東京財団政策研究所 柯隆主席研究員
「(中国で)不動産バブルが崩壊して、地方政府の債務を中心に不安要因が浮上してきているが、『融資平台』の政府系の投資会社も債務返済が滞るようになった」
銀行や投資家などから金を集め、町の開発を進めてきたのは「融資平台」という投資会社です。地方政府が作りました。
柯隆主席研究員
「地方政府が発行する地方債以外にもっとたくさんお金を借りたいから『融資平台』という投資会社を設立して、隠れ債務を発行してお金を借り入れていた」
ところが、中国の不動産不況などの影響で投資会社の資金繰りは悪化。進められていた工事もストップしました。
こうした事態は貴州省だけにとどまらず、中国全土で起きています。地方政府の損失は計り知れません。
柯隆主席研究員
「地方の債務だけで約100兆人民元(2000兆円)」
専門家の試算では、地方政府の借金は2000兆円。これは日本のGDPの3倍を超えます。
柯隆主席研究員
「背伸びしすぎたんでしょうね。地方政府の歳出に対するガバナンスが効いていないため無駄遣いが相当あって、どんどんどんどん不動産作っても買い手がつかない。最初から成立しないゲーム。融資平台の破綻も今、時間の問題になっている」
一方、中国政府は「隠れ債務の規模は縮小している」と主張。今後、監督体制を強化するとしています。
ただ、あおりを食らうのは中国国民です。
飲食店経営
「生活を維持するだけでも難しいです。生きることに疲れました」
今後、中国はどうなっていくのでしょうか…。
柯隆主席研究員
「有効な政策を早く打たないと、ますますリカバリーができなくなる。いわゆる弱者といわれる人たちが犠牲にされる。社会不安をもたらす一つのきっかけになる」
[テレ朝news]